エジプトのリゾート地、Hurghadaの安宿で出会った日本人青年が彼の大冒険を話してくれたことがあります。
彼もバックパッカーでしたが、すごい無謀なことをやらかしたそうです。
本人はあっけらかんとしていましたが、それは無事に帰ってきたからですよ。
彼はアフリカを旅行していたのですが、そのとんでもない考えが浮かんだのはモロッコにいる時でした。
地中海はモロッコとスペインの間に横たわるジブラルタル海峡で大西洋と区切られています。
海峡は、一番狭いところはモロッコからスペインまで14キロメーターしか離れていません。
これまでにも海峡横断を試みて成功した人たちはいますが、ボートがいつでも救助できる位置にありました。
しかし彼は何と、たった一人で誰にも何も言わずに、ジブラルタル海峡横断を試みたんです。
「スペインに着いたら入国できるように、この中にパスポートと金だけ入れて泳いだ」
と指さしたのは、大昔の学生が肩から提げていたものとよく似た、布製の四角いバッグ。
「たったそれだけで海峡を渡ろうとしたの?」(あきれ顔)
「水泳は長距離泳げるんで、問題はなかったんですけど。」
「でも、それは無謀じゃない?」
「俺も後でそう思いました」(笑)
「で、どうなったの?」
「3分の一くらい泳いだところで、何百メーターも流されてるのに気付いて、さすがにやばいと思って引き返しました」
「あそこは狭いから、流れがすごく速いのね。よく無事に帰ってこれたね」
「それは全く問題なかったですけど」(笑)
冒険の一つだよ、的な話し方で、万が一何かあったら、なんてことは彼の頭の中には欠片もありませんでした。
潮の流れさえ速くなければ、きっと向こう岸にたどり着いていたのでしょう。
海峡横断を中止したのは、彼の的確な判断です。
笑い話で済んで、本当によかったです。
万が一何かが起こっていたら・・・
私が頭に思い描いたのは、悲嘆する彼のご両親の姿だったんですから
ジブラルタル海峡 スペインからモロッコを見る (Wikipediaより)
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