メキシコを放浪していた頃、JETRO (日本貿易振興機構) のオフィスで、行方不明の日本人がいると聞いたことがあります。
JETROは観光案内の業務はしていませんが、メキシコにある数少ない日本関係の事務所ということで、当時よく日本人旅行者が出入りしていました。
「ここはそういうことを受け付ける所じゃないんだけど・・・」
と言いながらも、事務所の人は思案気な顔で日本人旅行者たちに話をしてくれました。
問題の人物はすでに何か月も音沙汰がなく、心配した親御さんが、最後に息子さんが寄った場所を片っ端から尋ね歩いているとのことでした。
「恐らく、手紙も書かずにあちこちを放浪しているんだろうけど、日本には時々連絡してくれないと」
一応、どこかでその人物を見かけたら捜索されてるよと伝えてね、と私たちも頼まれましたが、その人物に偶然にしろ出会うのは0%です。
親御さんの心配は、果てがなかったでしょうに。
その人物が現れたかどうかは、当然知りません。
場所は変わって、トルコのボスポロス海峡観光船の上。数年前のことです。
日本人の女の子が、トルコで知り合った外国人旅行者と談笑していました。
「あ、日本人がいる」
久しく日本人に出会っていなかった私は、声をかけてみました。
ヨーロッパ大陸を長く旅行していると話す彼女に、「日本には時々連絡してるの?」と聞くと、簡単明瞭な「いいえ」の答え。
心の中で舌打ちをしながら、いつ最後にご両親に手紙を出したのかと聞くと、帰ってきたのは・・・・・・
「うーん、二か月前かな?」
のんびりと答える本人の前で、私の脳裏に走ったのは当然、捜索願を出す彼女のご両親の姿です。
「ご両親はきっと心配してるから、すぐに連絡してあげて」
「そうかなあ」
「絶対心配してるから」
「はい」
はい、と言いながらも、本人の顔には否定の表情がありありと浮かんでいます。
『日本なんかより、もっとここを満喫しよう』
全く、親御さんがどれだけの心配をしているか、彼女には全然わかっていないんです。
「ご両親が絶対心配しているから、今日にでも連絡しなさいよ。メールを送るのは簡単でしょ?」
何度も念を押した後で彼女と別れましたが、友人たちとまた楽しそうに話しだす彼女を見ながら、溜息をつきました。
あの様子じゃ、すぐに連絡しそうにもありません。
「親の心、子知らず」
どれだけの人が、見せかけの行方不明者なんでしょう?
どれだけの人が親を心配させているんでしょう?
万が一事故や事件に巻き込まれても、家族に探し当ててもらえる可能性は0です。
せめて1か月に一度は便りを出してください。
日本からの手紙は日本領事館あてに送ってもらいましょう。
メールアドレスを持っている人は、インターネットカフェに頻繁に足を運びましょう。
心配している家族がいることを、忘れないでください。
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